64回フォトサーベイ

◎ フォトサーベイの解析結果入力は締め切りました。

【症例の情報】 49歳 女性 血液疾患 (材料:骨髄)

第64回フォトサーベイ集計結果

【参加者】
16名(参加施設:10)
【解析結果】
46,XX,t(8;21)(q22;q22)  ・・・・・・ 12名
46,XX,t(8;21)(q22;q22.1) ・・・・・・ 4名

精度管理委員からのコメント

今回は汎血球減少を指摘された症例です.画像1,2ともに400程度のバンドレベルと思われます.参加者全員がt(8;21)転座と回答されていました.
t(8;21)転座は,急性骨髄性白血病(AML)に見られる相互転座で,FAB分類のM2(稀にM1,M4)に認められます.また,WHO分類では特定の遺伝子異常を持つAMLとして分類され,予後良好群に含まれます.
21番染色体のRUNX1(AML1)遺伝子と,8番染色体のRUNX1T1(ETO)遺伝子が相互転座によりRUNX1-RUNX1T1(AML1-ETO)融合遺伝子を形成して,白血球の分化を阻害することで発症します.また,RUNX1遺伝子は造血細胞の分化に関与する遺伝子であり,同分類の中でRUNX1遺伝子変異を有するAMLとしても分類されています.
FISH法では,RUNX1遺伝子およびRUNX1遺伝子プローブを使用してRUNX1-RUNX1T1融合遺伝子を融合シグナルとして検出できます.間期核でも観察できるため,より多くの細胞を観察し,微量な変異細胞を検出することが可能です.
核型の切断点について,RUNX1遺伝子の遺伝子座位は8q21.3,RUNX1T1遺伝子は21q22.12とそれぞれ判明していますが,病型を決定する核型であるため,WHO分類またはFAB分類に表記されている核型に準拠して記載するのが好ましいと思われます.WHO分類の2008年版ではt(8;21)(q22;q22)とされていましたが,2016年版ではt(8;21)(q22;q22.1)と改訂されています.最新のものに準拠して,t(8;21)(q22;q22.1)と記載することを推奨します.
造血器腫瘍に関わる染色体検査は,今後の治療を決定する重要な検査です.低頻度のモザイクである可能性も考慮し,より正確な検査結果を臨床側に提供することが重要であると考えます.
今回期待した回答は,46,XX,t(8;21)(q22;q22.1)です.
(文責:鈴木翔太)
1) 宮西節子,曽根美智子,上野一郎:染色体遺伝子検査の基礎と臨床応用.日本臨床衛生検査技師会,東京,2010.
2) Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and Haematology :
http://atlasgeneticsoncology.org/index.html
3) Dniel A. Alber,Attilio Orazi, Robert Hasserjian, et al.:The 2016 revision to the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia. Blood. 2016 127(20) : 2391-2405.

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