フォトサーベイ集計結果
【参加者】
16名(10施設)
【解析結果】
46,X,-Y,+4,t(8;21)(q22;q22) 14名
46,X,add(Y)(p11),t(8;21)(q22;q22) 1名
46,X,-Y,t(8;21)(q22;q22),+mar 1名
精度管理委員からのコメント
・今回はAML-M2 [t(8;21)(q22;q22);RUNX1-RUNX1T1を有するAML]と診断された症例でした.バンドレベルは300程度と思われます.参加者全員がt(8;21)(q22;q22)を指摘されています.
・t(8;21)(q22;q22)転座は全AMLの5~12%,FAB分類M2症例中の10~40%に認められますが, M1やM4にも認められます.小児AMLでは最も頻度が高い異常です.また欧米より日本は頻度が高いと言われています1)2)3).
・t(8;21)転座症例の75%に付加的異常があり,最も多いのが性染色体の欠失で,男性ではY染色体欠失が60%に,女性では不活化したX染色体の欠失が40%に見られます.その他の異常として9q22の欠失を伴う9番染色体長腕の中間部欠失,7番染色体長腕の転座や欠失,8番染色体のトリソミーが報告されています1)2)3).今回の4番染色体トリソミーは稀な付加的異常ではありますが,数例の報告があります4).性染色体の欠失は予後に影響しませんが,それ以外の付加的異常は予後に影響しないというものと,するというものの両方の報告があります1)2)3) .
・形態学的な特徴として,顆粒球系は成熟傾向があり,核分葉異常や細胞質染色異常などの異形性を認めます.好酸球系の幼弱細胞の増加のある症例も認められています.
・化学療法に対する反応性は良好で高い寛解率を示すことからt(8;21)転座は予後良好因子とされています.しかし再発率も高く,強力な地固め療法を行うことが必要とされています. CD56発現やKIT遺伝子変異のある症例は予後に悪影響を及ぼす可能性があると報告されています1)5).
今回期待された回答は46,X,-Y,+4,t(8;21)(q22;q22)です.
1)木崎昌弘,田丸惇一編集,押味和夫監修:WHO分類第4版による白血病・リンパ系腫瘍の病態学.中外医学社,東京,2009
2)朝長万左男編集:染色体異常の基礎と臨床.医薬ジャーナル社,東京,2006.
3)Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and Haematology: http://atlasgeneticsoncology.org//Anomalies/t0821ID1019.html
4)Nishii K,Usui E et al.:Characteristics of t(8;21) acute myeloid leukemia (AML) with additional chromosomal abnormality:concomitant trisomy 4 may constitute a distinctive subtype of t(8;21) AML.Leukemia.2003 Apr;17(4):731-737.
5)小児白血病・リンパ腫の診療ガイドラインwww.jspho.jp/pdf/guideline 急性骨髄性白血病AML http://www.jspho.jp/pdf/guideline/llgl11_06.pdf
(文責 高井良美智代)