学会ニュース29:地方大学から遺伝子検査学教育を支えて

地方大学から遺伝子検査学教育を支えて

残暑の候,会員の皆様におかれましては,ますますご健勝のこととお慶び申し上げます.私は香川県立保健医療大学の臨床検査学科の助教で,主に分子生物学,臨床遺伝子検査学,輸血・移植検査学,免疫検査学などの実習を担当しております.原稿を依頼され、学会ニュースとしてふさわしいか不安ですが,本稿では私の勤務大学における遺伝子検査学教育の取り組みを少し紹介したいと思います.
本大学は前身の短期大学から現在の4年制大学に移行する際に,遺伝子検査関連科目を開講し,当学会理事で事務局長の上野一郎先生がご着任されました.学部の遺伝子検査関連科目は,1年次に生命科学概論(30時間),2年次に分子生物学(30時間)・同実習(30時間),3年次に臨床遺伝子検査学(30時間)・同実習(30時間)が必修専門教育科目として配置されており,計150時間の履修時間を要します.遺伝子検査には幅広い知識と高度な技術の習得が必要です.次世代シークエンサーの登場はNIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)や遺伝子変異解析,単一遺伝性疾患の遺伝子解析などに大きく寄与していますが,一度に大きな遺伝子情報を取得できる機器を扱う者として,適切に遺伝子情報を分析・伝達・管理する能力の育成も今後ますます必要になると思います.また,4年次には卒業研究の合間に,毎週1時間英語論文の抄読会を行い,研究活動だけで
なく日々最新の知見にアンテナを張るようにサポートしています.
また平成29年度より,本大学では新たに博士後期課程(臨床検査学専攻)が新設されました.現在開講されている4つの選択科目のうち遺伝子検査技術論では、遺伝子検査技術,遺伝学の基礎知識を更に深め,効率的な遺伝子検査の開発や遺伝子情報に関する情報リテラシーについて学修します.また,本大学の臨床検査学分野の学位は学士号,修士号,および博士号すべて「臨床検査学」であり,特に臨床検査分野の高度専門職業人および教育研究者の育成という意味で,非常に大きな役割と責任を担っていると感じています.そのような中で,臨床検査分野における遺伝子検査技術の開発や,教育・研究に貢献する人材の育成において,少しでも貢献していきたいと考えています.私も昨年に他大学で博士号を取得したばかりですが,日常業務と大学院での研究を両立することは,容易ではありませんでした.しかし,学位取得が目的で始まった大学院進学でしたが,その経験は国際学会での発表や国際雑誌への論文投稿への楽しみに変わり,自身の研究への熱意を学部での教育・研究指導にも生かす糧になっていると感じています.
最後に,遺伝子検査学教育を通して,地方から当学会を盛り上げていけるように,努力していきたいと思います。

PDF版はこちら 矢印 学会ニュース第29号

日本染色体遺伝子検査学会理事
香川県立保健医療大学保健医療学部臨床検査学科
大星航

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