68回フォトサーベイ

◎ フォトサーベイの解析結果入力は締め切りました。

【症例の情報】 50歳代 女性 血液疾患 (材料:骨髄)

第68回フォトサーベイ集計結果

【参加者】
21名(参加施設:14)
【解析結果】
46,XX,t(9;11)(p21.3;q23.3) ・・・・ 16名
46,XX,t(9;11)(p21;q23) ・・・・ 2名
46,XX,t(9;11)(p22;q23) ・・・・ 2名
46,XX ・・・・ 1名

精度管理委員からのコメント

今回は,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes :MDS)の診断で,9番と11番の相互転座を認めた症例です.
画像1,2ともに400バンドレベルです.各染色体の相同性を見ていくと,まず11番染色体の長腕末端に異常があることがわかります.この異常な11番染色体は,11q22のdark band,11q23と考えるlight bandの一部までは確認できますが,その先は11q24のdark bandに比べると太いdark bandが見られています.このことから,11q23すなわちKMT2A(MLL)転座を考えます.11q23から11qterまでの領域が転座している相手を探しますと,9番染色体の短腕に異常があることに気がつきます.この異常な9番染色体は9p21のdark bandは確認できますが,9p23のdark band部分がlight bandになっています.このlight band領域をよく観察すると1本の細いdark bandが確認でき,これが11q24のdark bandと考えられます.このことから,異常な11番染色体の太いdark bandを9p23と考え,9p22と 11q23が切断点の相互転座と考えます.
t(9;11)転座は,急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia:AML)で最も高頻度に認められるKMT2A(MLL)転座です.FAB分類ではAML-M4,M5に認められる染色体異常ですが,治療関連骨髄性腫瘍(therapy-related myeloid neoplasms:t-MN)でも見られます.今回の症例は乳がんの既往がありその後MDSと診断されています.
KMT2A遺伝子と9番染色体短腕に座位するMLLT3遺伝子との相互転座によりKMT2A-MLLT3 mRNAが形成されます.t(9;11)転座は他のKMT2A遺伝子異常を有する疾患よりも予後がよいため, WHO分類第4版から,t(9;11)(p22;q23);MLLT3-MLL(KMT2A)融合遺伝子を伴うAMLとして独立した病型となっています.
以前はバンドパターンからt(9;11)(p22;q23)と記載されていました.今日ではMLLT 3遺伝子は9p21.3にKMT2A遺伝子は11q23.3に座位することが判明し,WHO分類2017ではt(9;11)(p21.3;q23.3)と詳細に記載されています.
70%の症例では付加的異常はみられませんが,+8が20%,+6,+19,+21が少数にみられるという報告があります.
今回期待した回答は,46,XX,t(9;11)(p21.3;q23.3)です.
(文責;高井良美智代)

参考文献
1) Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology andHaematology:http://atlasgeneticsoncology.org/index.html
2) The 2016 revision to the World Health Organization classi?cation of myeloid neoplasms and acute leukemia.Blood 127:2391-2405,2016

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