第51回フォトサーベイ集計結果および精度管理委員からのコメント
【症例.材料】
症例:78歳 女性 血液疾患
材料:リンパ節
【参加者】
17名(参加施設:11)
【解析結果】
46,XX,t(11;18)(q21;q21) .........12名
46,XX,t(11;18)(q21;q21) or 46,XX,t(11;18)(q23;q23) ...2名
46,XX,t(11;18)(q23;q23), del(17)(p?) .......1名
46,XX,del(11)(q23) ........ 2名
精度管理委員からのコメント
症例の詳細は不明ですが,悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)と診断されています.
MALTリンパ腫はB細胞性リンパ腫全体の7~8%を占め,胃リンパ腫においては50%以上を占めるといわれています1).MALTリンパ腫に認められる染色体異常は,t(11;18)(q21;q21)が25~50%と最も多く,他に3番や8番のtrisomyがみられることがあります.胃MALTリンパ腫の発症に,Helicobacter pyloriが深く関与していると考えられておりH. pyloriの除菌により病変が改善ないしは消失するものが多いとされています.しかし,t(11;18)(q21;q21)が認められる症例は除菌抵抗性とされ,大細胞リンパ腫への移行も報告されています.
今回のバンドレベルは300~400程度と思われます.参加者のほとんどが11番と18番の相互転座と回答していますが,今回の画像はバンドがややぼやけているために,切断点の判定が困難との指摘がありました.
画像の核板を並べてみると11番の長腕が1本短く,18番が1本長いことに気づきます.異常の11番は正常の11番に比べ, 11q14-22領域に相当するdark bandの幅が広く間にlight bandが確認できます.また,異常の18番のq22領域に相当するdark bandは正常18番に比べ幅が広く濃染しており,長腕末端部に11q24と考えられるdark bandが認められます.11番と18番の相互転座を疑い,今回の材料がリンパ節であることを考慮すると切断点の11q21,18q21が導かれると思われます.
今回の期待した回答は,46,XX,t(11;18)(q21;q21)です.
(文責 高橋裕之)
参考文献
1) 木崎昌弘 ,田丸惇一:WHO分類第4版による白血病.リンパ系腫瘍の病態学
押味和夫,中外医学社,東京,2009 .