学会ニュース23:EWSR1-FLI1 融合遺伝子について

EWSR1-FLI1 融合遺伝子について

平成28 年度診療報酬制度の保険適用のD004-2(1)項には「悪性腫瘍遺伝子検査は,固形腫瘍の腫瘍細胞を検体とし,PCR 法,SSCP 法,RFLP 法等を用いて,悪性腫瘍の詳細な診断及び治療法の選択を目的として(略)悪性骨軟部組織腫瘍におけるEWS-Fli 1 遺伝子検査,TLS-CHOP 遺伝子検査又はSYT-SSX 遺伝子検査について(以下略)」と記載されている.そこで今回は,EWSR1-FLI1 融合遺伝子について少し述べることにする.

EWSR1-FLI1 融合遺伝子は,骨の小円形細胞腫瘍であるEwing’s 肉腫,骨外性のEwing’s肉腫,末梢性原始神経外胚葉腫瘍,小児の胸壁の小円形細胞腫であるAskin’s tumor に共通して認められ,現在ではこれらの腫瘍は総称してEwing sarcoma family of tumors(ESFTもしくはEFT)と呼ばれている.

融合遺伝子が検出されるとESFT の診断が確定されるわけであるが,この融合遺伝子,現在までに,EWSR1-FLI1 の他にERG, ETV1, E1AF (ETV4), FEV, NFATC2, SMARCA5 との融合遺伝子が報告されている.また,EWSR1 遺伝子はFUS 遺伝子とホモロジーがありFUS-ERG, FEV も報告されている.加えて,それぞれの融合遺伝子で切断融合部が異なる亜型が存在する.例えばEWSR1-FLI1 では,EWSR1 ex2,8,9,10 FLI1 ex4,5,6,7,8,9 とで,少し調べただけで12 種類の亜型が報告されており日々増加している.亜型をTypeI,TypeIIなどと記載していた時代もあったが,現在はほとんど使われていない.病理組織診断に用いるパラフィン包埋材料では,遺伝子検査に用いるRNA が固定・包埋過程で細粉化しているので12 種類の亜型を検出するのに12 種類のプライマーセットが必要となる場合もある.亜型の頻度は文献により若干異なるが,EWSR1-FLI1 が約85%で(文献ではありふれた型は報告されないので,実際にはもっと頻度は高いと思う),このうちEWSR1ex7-FLI1ex6が約50%とされているので,とりあえずこの型の融合遺伝子の検出を試みればよいのであるが,出なかった場合は,有るか無いか分からない融合遺伝子を探し求めて長い旅に出ることになる.

頼りのEWSR1 の分裂を検出するFISH 法でもEWSR1 の分裂が認められる腫瘍はESFTの他に,線維形成性小細胞腫瘍,骨外性粘液軟骨肉腫,明細胞肉腫,類血管腫型線維性組織球腫,粘液型脂肪肉腫(亜型)などが報告されている.これも今後増えそうで,分裂があるからと言ってESFT であるとは限らない.当然,FUS-ERG, FEV 融合遺伝子が生じている場合は,分裂は認められない.

診断は,遺伝子の異常だけを検出して決定するわけではないが,今後シーケンサーの開発が進んで,パラフィン切片1,2 枚あれば,全ゲノムもしくは全遺伝子の塩基配列の解析が可能になって,ちまちま,ちまちま,PCR をかけなくてもこのような遺伝子の異常が検出できる時代になることを切に希望する.

最後に蛇足ではあるが,融合遺伝子は最近ではほとんどEWSR1-FLI1 と記載されており,診療報酬でEWS-Fli 1 の字面を見たとき,なんだかとても懐かしい心持がした.

PDF版はこちら 矢印学会ニュース第23号

日本染色体遺伝子検査学会 理事
福岡大学医学部病理学講座
石黒 晶子

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